世の中の常識というのは、そのうち変わることがあります。
例えば
- 腰が痛いときは温める >> まずは冷やせ!
- バターよりマーガリンが体に良い >> マーガリンは危険な油!
なんかは聞いたことがあると思います。
どっちが正しいというのは明らかになっている場合もありますが、今の科学で出た結論ですし、同時期にまったく逆のことを言っている人もいます。
最後は自分の判断でどれを採用するかを決めなければいけません。(自分の理論を作り上げる道もあります)
今回は「動物性脂肪」と「植物性脂肪」はどちらが体に良いのか、という問題を考えていきます。
目次
現在の風潮(常識)
ずっと「植物性脂肪が体に良い」ということが言われ続けてきました。
スーパーの棚には「サラダ油」が山のように並んでいます。
スーパーも売れないものは仕入れをしないので、商品がたくさん陳列されているということは売れている=植物性脂肪が良いと思われているか、世の中で売れている物(販売メーカーが売りたい物)をなんとなく買っているのか、ということだと思います。
どちらにしても私たちの周りは植物性脂肪で溢れかえっています。
動物性脂肪はどうでしょうか。
動物性脂肪であるバターはよく見かけますが、サラダ油ほどたくさんの種類はないですよね。むしろ見た目はバターと似た植物性のマーガリンの方が多く陳列されている?
ラード(豚脂)は普通のスーパーよりも業務用スーパーに置いてある方が多いです。
ヘット(牛脂)も一般家庭では何かのイベントの時にしか使いませんから、普段は目にも入らないですよね?(笑)
牛肉、豚肉、鶏肉はたくさん陳列されていますから「脂」というよりも「肉を買った結果、当然脂も入っている」というイメージですね。
それでは「動物性よりも植物性の方が体に良い」という常識を考えていきます。
動物性脂肪を否定する意見としては
- 常温で個体の「飽和脂肪酸」なので、血液をドロドロにし動脈硬化につながる
- コレステロールが含まれているので、食べるとコレステロールが高くなる
という説が多いです。
考えていくために、まずは油脂の基本的な説明をしておきますね!
油(脂)の基本的な話
油脂は飽和脂肪酸(ほうわしぼうさん)と不飽和脂肪酸(ふほうわしぼうさん)に分かれます。
飽和脂肪酸は「常温で個体」の脂です。動物性脂肪はほとんどがこれです。
でも植物性脂肪も種類によっては飽和脂肪酸のものもあります。ココナッツオイルやパーム油など。
分子同士ががっちり結びついているので、酸化に強い特徴があります。(がっちり結びついているので個体なのです)
ちなみに「あぶら」は油と脂があり、油脂(ゆし)と表現されますが、飽和脂肪酸は「脂(あぶら)」と表現されます。
次に説明する不飽和脂肪酸は「油(あぶら)」と表現されます。
不飽和脂肪酸は「常温で液体」。サラダ油のイメージ。使いやすいが酸化しやすい。
不飽和脂肪酸はさらに「一価不飽和脂肪酸」と「多価不飽和脂肪酸」に分かれます。
だんだんややこしくなってきたかもしれませんが、図にすると簡単です!
必須脂肪酸とは何か?
先程の図で「必須脂肪酸」と赤字で書いていますが、オメガ3とオメガ6は必須脂肪酸と呼ばれ、これらの油は体内で作ることができず食べることで体内に取り込まなければいけません。
油は体中の細胞膜の主な成分です。
オメガ3とオメガ6は細胞膜の柔軟さ、硬さを決める超重要な油です。
この図を見て勘違いしてほしくないのは、例えばオメガ6に分類されている「大豆油」ですが、オメガ6だけが入っているのではなくて
100g中に
- 飽和脂肪酸:約15.6g
- オメガ9:約22.7g
- オメガ6:約50g
- オメガ3:約6.8g
というような割合で様々な脂肪酸が含まれています。
その中で特にオメガ6が豊富に含まれているので、大豆油をオメガ6に分類しているだけです。
上の図だけを見ると、動物性脂肪に多い飽和脂肪酸には、必須脂肪酸のオメガ3やオメガ6が含まれていないように感じますが、そんなことはありません。
例えばヘット(牛脂)100g中には
- 飽和脂肪酸:約50g
- オメガ9:約42g
- オメガ3+オメガ6:約4g
という感じで、動物性脂肪にも様々な脂肪酸が含まれています。
ですので肉ばかり食べていても必須脂肪酸は摂取できています。(量は少ないですが)
厚生労働省から必須脂肪酸の食事摂取基準は以下のように公開されています。(1日に何グラム摂取すればよいか)
脂肪酸 | オメガ6 | オメガ3 | ||
性別 | 男性 | 女性 | 男性 | 女性 |
年齢 | 目安量 | 目安量 | 目安量 | 目安量 |
1~2歳 | 5 | 5 | 0.7 | 0.8 |
3~5歳 | 7 | 6 | 1.3 | 1.1 |
6~7歳 | 7 | 7 | 1.4 | 1.3 |
8~9歳 | 9 | 7 | 1.7 | 1.4 |
10~11歳 | 9 | 8 | 1.7 | 1.5 |
12~14歳 | 12 | 10 | 2.1 | 1.8 |
15~17歳 | 13 | 10 | 2.3 | 1.7 |
18~29歳 | 11 | 8 | 2.0 | 1.6 |
30~49歳 | 10 | 8 | 2.1 | 1.6 |
50~69歳 | 10 | 8 | 2.4 | 2.0 |
70歳以上 | 8 | 7 | 2.2 | 1.9 |
それほど多くの必須脂肪酸を取らなくても大丈夫ですね。でも、一昔前に流行った油抜きダイエットなどをしてしまうと、脂質が圧倒的に足りなくなるのでやめてくださいね!
上の表を見ても分かりますが、オメガ6とオメガ3の割合は大体4:1になっていると思います。
これが理想の割合ですが、現代人はオメガ6が異常に多いとされていますので注意が必要です。
(オメガ6の摂り過ぎは様々な病気の原因になっています)
油の基本知識はこれくらいにしておいて、上でも書いた今回考えたい
- 常温で個体の「飽和脂肪酸」なので、血液をドロドロにし動脈硬化につながる
- コレステロールが含まれているので、食べるとコレステロールが高くなる
に進んで行きましょう。
飽和脂肪酸は血液をドロドロにするの?
恐らく世の中のほとんどの情報は、
動物は人間よりも体温が高いから脂は固まらないが、その脂を人間が食べると動物より体温が低いので血液中で脂が固まりやすく動脈硬化につながる。
ということです。
なんとなくイメージはしやすいですが、ほんとにそうなの?ということに突っ込んでいる人は少ないようです。
確かに動物は人間よりも体温が高いです。
Wikipedeiaで平均体温を調べてみると・・・
- 鶏:42.0度
- 豚:39.0度
- やぎ:39.0度
- 羊:39.0度
- うさぎ:39.5度
- 牛:38.5度
- 犬:38.5度
- 猫:38.5度
- 馬:37.5度
- 人間:36.0度
よく食べるであろう「鶏」「豚」「牛」と、「人間」を強調していますが、確かに動物は人間より体温は高いですね。
鶏こんなに体温高いんですね!
私は「動物の脂が直接血液中に流れる?消化吸収してるのに?」という疑問がありました。
これも私のイメージですが、肉をたくさん食べている人は元気な人が多いと感じていて、肉が苦手であまりほとんど食べない人から「元気そう」という感じを受けませんでした。
全員が全員そう感じたわけではないですし、そんなに極端に「肉ばっかり食べる」「肉は一切食べない」という人も少ないので完全にイメージですが・・・
まぁそんなことより話を戻します。
動物性脂肪は血液がドロドロになって血栓ができやすいのでしょうか?
調べてみましたが「人間の血液内で動物性脂肪が固まり血液がドロドロになる」と言っている人は大勢いますが、科学的根拠が書かれいてるところは見当たりませんでした。
ちなみに脂質は血液中を脂質のまま移動していません。
りぽタンパクという「船」に乗って全身を移動します。
りぽタンパクの中に入っている脂質が固まってきたとして(個人的には固まらないと思っていますが)、りぽタンパクが血液をドロドロにするのかというと、そうも思えません。
もっと言うと、体に良いと話題のココナッツオイルも飽和脂肪酸です。動物性脂肪と同じく常温で固体の脂です。
この問題は動物性・植物性の違いではなく、飽和脂肪酸か不飽和脂肪酸かという問題だと考えています。
もし、肉類に含まれる飽和脂肪酸をたくさん食べたとして血液がドロドロになって様々な病気になるなら、飽和脂肪酸をたくさん食べる地域の寿命は縮まるはずです。
沖縄で興味深い話があります。
沖縄は当時、豚肉の消費量が日本一でした。
それでも、日本一、世界でもトップの長寿の地域でした。
しかし、沖縄の食生活が変化してからどんどん寿命が短くなってきています。(都道府県ランキングでいうと男性は26位まで落ちています)
一般的に言われている食生活の変化とは「食の欧米化」です。
「食の欧米化」→「肉食」と思うかもしれませんが、ちょっと待ってください。
ハンバーガーやフライドチキン、その他ファストフード。このような食べものが一気に増えたのです。
※1963年に国内初めてのファストフード店が沖縄でオープンされました。
もちろん動物性脂肪の摂りすぎ(そもそもの脂質の摂り過ぎ)も問題にはなりますが、それよりも揚げ物などに含まれる「植物性脂肪」が極端に増えています。
ファストフードだけでなく、動物性脂肪のラードを植物性油に変えたことも寿命が短くなってしまった要因と考えられています。
私は、酸化した植物性油(たとえばサラダ油など)の方が、危ないと思っています。
植物性の油は酸化しやすい構造をしています。そのため、体の中にある活性酸素がさらに酸化させようとします。
少し話は外れてしまいますが、脂肪の摂りすぎよりも「糖質」の摂りすぎが一番の問題だと考えています。
飽和脂肪酸を食べるとコレステロール値が上がる?
飽和脂肪酸を摂取しすぎると、肝臓でコレステロールの合成を促進し、血中コレステロール値を上げてしまう。
その結果動脈硬化を起こす。
という意見がまだまだありますね。
逆にサラダ油などに多く含まれる不飽和脂肪酸の「リノール酸」を摂れば、コレステロール値が下がる。などの情報もあり、サラダ油が一気に普及しました。
スーパーに行ってサラダ油のパッケージを見てみて下さい。「コレステロール0」の文字がたくさん書かれていると思います。
現状は上記のような認識が世間の主流です。
まだマイノリティ(少数派)かもしれませんが、科学的には違う見解が主流になりつつあります。
コレステロールの摂取量、上限撤廃
厚生労働省は2015年から摂取基準量を撤廃しました。
つまり「食事で摂取するコレステロール値は制限しない」と言っているわけです。
昔から言われてきた「卵、1日2個まで」などはもう昔の話です。(常識的な数までなら・・10個くらいなら大丈夫だとは思います)
また血中のコレステロール値は「年齢」「性別」によって正常値は細かく分かれるはずですが、日本の基準は
- 総コレステロール140~219mgくらいが正常
- 悪玉コレステロール60~120mgくらいが正常
となっています。
年齢、性別には区別なく上記の数値です。
さらに血中コレステロール値は「高い方が健康である(長生きする)」というデータも出始めました。
コレステロール値は極端に高くなかれば問題ない、という見解がだんだんと主流になりつつあります。
まとめ
単純に脂肪の摂りすぎに関しては、カロリーの摂りすぎになる可能性はあります。
何にしても食べすぎはよくありませんが、動物性脂肪の摂り過ぎではなく酸化した(ヤバい)植物性脂肪の摂り過ぎによる悪影響が大きいです。
少し脱線しますが、脂質ではなく糖質の摂りすぎによる悪影響の方がさらに大きいと考えています。
最も肥満につながり安いのは糖質の摂りすぎです。糖質が入ってくると人間の体は「体に脂肪を蓄えよう」とします。
脂質はエネルギーにもなりますが、その他、体全体に使われる栄養素です。
私は動物性脂肪を積極的に摂取しています。
ただ、動物性脂肪の品質はその動物が食べている餌や飼われ方にモロに依存してしまいます。
ジビエが特に好きですが、毎日食べることはなかなかできませんしお金もかかります。。。
どこまでこだわるのかというバランスは人それぞれ違いますので、自分のバランスを見つけてくださいね!