コレステロールは悪なのか!?

コレステロールは悪者?

健康に気をつけている人は「コレステロール」という言葉は当たり前に知っていると思います。

健康診断の結果にも書かれていますね。

コレステロールに対する一般的なイメージは「摂り過ぎたらいけないもの」「体に悪いもの」でしょうか。

今回はコレステロールの話をしていきますが、深入りすると脂質についての専門用語ばかりになってくるので、さわり程度の説明になってしまうかもしれませんが頑張ってみます。

コレステロールとは一体何なんだ!?

コレステロールとは

コレステロールとは簡単に言うと「脂質(油)」です。

人間の体は約60兆個の細胞でできていますが、このすべての細胞膜の主成分は、コレステロールとリン脂質という油です。

細胞膜は細胞を外敵から守り、栄養素や酸素を取り込んだり、細胞膜の老廃物

を排出したりします。

さらに、脂溶性ビタミン(ビタミンD)の材料になったり、様々なホルモンの材料にもなります。

つまり、コレステロールは体には「絶対に欠かせない必要なもの」なのです。

 

善玉と悪玉のコレステロール

悪玉と善玉コレステロール

善玉、悪玉という言葉はコレステロールだけでなく、体の中のいろいろな箇所で使われていますね。
(例えば善玉菌、悪玉菌とか)

コレステロールでいう善玉と悪玉は、名前の付け方がいまいちというか、こう呼びたい気持ちはわからなくはないんですけど、少し説明しておきますね。

善玉コレステロールのことを「HDL」、悪玉コレステロールのことを「LDL」と言います。

健康診断の結果にも表示されていると思います。

 

善玉「HDL」と悪玉「LDL」なんですが、実は同じコレステロールなんです。正確には「コレステロール+たんぱく質→リポたんぱく」の一種です。

ややこしいですね。。。

コレステロールはこの「リポたんぱく」に乗って、肝臓から体中に血液で運搬されます。

 

このリポたんぱくが「善玉コレステロール」と「悪玉コレステロール」と呼ばれているのですが、呼ばれ方の違いは比重の違いです。(リポたんぱくにどれくらいコレステロールが入っているかの違い

比重が違うだけで善と悪、真逆の名前になってしまいますが、その作用としては

  • 善玉コレステロール「HDL」 → 各臓器や組織からコレステロールを回収し肝臓へ運ぶ
  • 悪玉コレステロール「LDL」 → 肝臓から各臓器や組織にコレステロールを分配する

というコレステロールを回収するか分配するかで善か悪かという違いになっているのです。

 

なぜ悪玉と呼ばれているかというと、コレステロールを分配する量が多すぎると使いきれなかったコレステロールが血管壁にたまり動脈硬化に繋がると考えられている(いた)からです。

 

適正なコレステロール値は??

適正なコレステロールの基準値は?

コレステロールは体には絶対に必要なものということはOKだとおもいます。

コレステロール値が低ければ、体中の細胞の細胞膜が弱くなり様々な病気の原因になります。

しかし、悪玉コレステロールが増えすぎれば動脈硬化などの危険性がある可能性もあります(あるとされていました)。

 

困ります。難しいですね・・・でも世の中のほとんどのことって、ある一面だけをみて「これがいい!こういうこと!」ってなかなか言えません。いろいろな側面から考える練習ですね。

それでは、適正なコレステロール値はどれくらいなのでしょうか。

 

日本の基準ですが、正直なところ「これ!」というものは決まっていませんし、各団体で基準値が異なったりします。

一般的には

  • 総コレステロール140~219mgくらいが正常
  • 悪玉コレステロール60~120mgくらいが正常

とされていました。

この基準値を元に食事の指導や薬が出されたりします。

 

しかしこの基準値に関してはもう何年もいろんな論争があります。

コレステロールの論争

日本脂質栄養学会(こんな学会あるんですね・・・)が2010年に「コレステロール値は高いほうが長生きする」と発表しています。

もちろん理論だけではなく、神奈川県伊勢原市の老人基本検診受信者(男性8340人、女性1万3591人)を約7年間追跡した結果、悪玉コレステロールが低い人のほうが死亡率が高かった、という結果も出ていました。
※これは2010年当時の情報で、現在はもっと様々な検証がなされています。

しかし、日本動脈硬化学会(こんな学会まであるんですね・・・)は、脂質異常症の患者に対するコレステロールの摂取制限は今後も継続する、という従来通りの見解です。

 

もう何がなんだかわからないですね(笑)

 

しかし、一つの目安となる発表があります。

コレステロール値の目安

コレステロール値の目安

厚生労働省が「日本人の食事摂取基準(2015年版)」で、これまではコレステロールの上限を決めていた目標量を撤廃しました。

この撤廃について厚生労働省は「目標量を設定するのに十分な科学的根拠が得られなかったため」としています。

さらにアメリカでも少し前に同様の見解が出されています。

 

こうなってくると今までの基準が怪しくなってきますね。

 

コレステロールのことでは有名?な話ですが、東海大学医学部名誉教授・大櫛陽一氏は新基準を提唱しています。

今までの基準は男性・女性・年齢に区別なく設定されていたが、必要なコレステロールはそれぞれ違うので大櫛陽一氏の新基準は細かく分けられています。

この基準値を採用するのがいいんじゃないかな、と考えています。

総コレ・・・総コレステロール  LDL・・・悪玉コレステロール

年齢 性別 総コレ LDL
30~34 男性 127~250 59~170
女性 123~235 50~141
35~39 男性 135~258 63~176
女性 131~239 57~144
40~44 男性 139~265 65~181
女性 137~246 57~157
45~49 男性 142~267 67~183
女性 141~261 62~171
50~54 男性 144~269 67~185
女性 154~280 72~186
55~59 男性 144~269 68~186
女性 161~286 80~192
60~64 男性 143~267 72~183
女性 163~283 82~192
65~69 男性 143~265 72~180
女性 162~281 81~191
70~74 男性 140~263 71~178
女性 159~277 76~194
75~79 男性 137~258 73~174
女性 150~278 74~194

※日本総合健診医学会
※その油をかえなさい!(内海聡 著)

 

じゃ、動脈硬化の直接的な原因は?

動脈硬化の原因は?

いままでは動脈硬化の主な原因は悪玉コレステロール(LDL)にあるとの考え方が主流でした。

しかしこれまで解説してきたように、どうも直接的な原因ではなさそうです。

 

では現在のところ動脈硬化の直接的な原因と考えられているのは「活性酸素」です!

悪玉コレステロールは活性酸素の攻撃を受けると、りぽたんぱくが破壊され中のコレステロールまでもが酸化します。

その結果

血管がボロボロ→修復するためにコレステロールが届けられる→活性酸素が多いと更に酸化が進む→かさぶたのように盛り上がる(プラーク)→プラークが剥がれ落ち血栓になる

という説が有力です。

 

活性酸素は本当にやっかいですね。

ファイトケミカルスの記事で活性酸素について書いていますので、知らない人は一読をオススメします。

 

まとめ

コレステロールまとめ

コレステロールについていかがでしたでしょうか。

まとめると

  • コレステロールは体にとって必要で重要なもの
  • 善玉と悪玉はリポたんぱくに入っているコレステロールの量の違い
  • 適切なコレステロール基準値は変わってきている
  • 動脈硬化の直接的な原因は活性酸素

です。

 

科学も医学も栄養学も、常にアップデートされていきます。

わかり易い例だと、スポーツで怪我をした時は昔は「温める」でしたが現在は「冷やす」と真逆になっていますね。

今の常識がどのようにして常識になったのかを調べていくと、意外と「なんとなく」決められていることも多いと思います。

 

特に健康に関しては○○に効果がある、というような一面性だけでは決めることができず、いろいろな見解があるので難しいと思いますが、自分なりの見解を持つというのは大事だと思います。